2018-06-26

【書評】橘玲の「朝日ぎらい」は政治が詳しくないけど、現状の日本やマスコミにモヤモヤしたきもちに明確な形を与えてくれる名著である

「朝日ぎらい」は現代の政治思想の見取り図として秀逸

こんにちは、じゅんです。

今日は、橘玲さんの新作「朝日ぎらい」についての感想を書いていきます。

橘玲さんの本は昔からファンで、著書の大半を読んでいるかと思います。著書の特徴として、今まで語られてこなかった暗黙知的なものを、論理的構造的に説明すること、かつそこにデータ的な裏付けをつけることで学術的な根拠を求めることがあるかと思います。
要は、客観的なデータをもとに、なんとなくふんわりしたものに形を与え、現実の見え方をクリアにして(もしくは見え方を変えて)くれる、そんな著者です。

今までは個人としての生き方や金融・財産戦略、キャリア論が多かったですが、今回は政治関連。どんなものかなぁと思って読んでみたら、いままでの著書と同じく全く門外漢の私にもある程度現代日本の見取り図が見えてくるようなそんな本でした。

印象に残った箇所を上げていきます。門外漢なので、理解が間違えていたりしたら教えてほしいです。

日本はリベラルと保守が年代で逆転する

まず、1点目は、日本において各政党をリベラルと保守(左翼と右翼)と分布したときに、年代によってその認識が逆転するという調査結果です。

わかり易い例で言えば、高齢者においては自民党は保守(右翼)として認識されているが、若年層においてはリベラル(左翼)として認識されているということ、また高齢者は共産党を最左翼として認識しているが、若年層だと中道という認識であることです。

前提として安倍政権への評価は若年層(特に男性)において高く、それをもって「若者の右傾化」とよく表現されているが、若者は安倍政権のことをリベラルと認識した上で支持しているという指摘は、私の周囲の肌感としても違和感がなくしっくり来ました。

ネトウヨとはどんな人なのか

2点目は、ネトウヨという存在の定義です。

ネトウヨとは、ネット右翼の略称ですが、橘玲さんの定義では、「日本人であるということ以外にアイデンティティがない人」ということになります。
ベースには右翼的な、アジアの中で優秀な民族としての日本人という優生論がありますが、無条件で手に入れたそのアイデンティティに強烈に固執している人たちがネトウヨやその支持層であるとの指摘でした。

驚いたのは、ネトウヨは天皇陛下すら「反日」としうることです。重要なのは天皇陛下を頂点とした体制ではなくて、日本人というアイデンティティの保持なので、それを揺るがす場合は天皇陛下すら攻撃していくという話には、ちょっとした恐怖すら感じました。

日本型リベラルの高齢化

あとは、本書のメインの主張であろう、日本型リベラルの高齢化に伴う保守化、それによるリベラルの影響力の弱体のことです。

「朝日ぎらい」とはつまりそういった現状の1つの発露なのだということですね。
男女平等だったり、人権遵守を主張していくリベラルであり、そういった視点で権力を監視する立場のメディア。それが今日これだけ批判されるのは、男女の不平等を批判するメディア自身が最も男女不平等な組織であり、電通のパワハラや異常な労働時間を批判するテレビ局の社員が最も残業が多いという、自己矛盾やダブルスダンダードに原因があるんだということを筆者は主張しています。

メディアを作ってきた層が高齢化し、既得権益側に回ってしまったことで、自らにメスをいれることができなくなってしまい、政権や社会への批判がブーメランになってしまっている構造的な問題を改善することでしか、日本のリベラルは力を取り戻せないという主張は、ギリギリ若者である私としてもうなずくばかりでした。

この本への反応とネトウヨ的な構造

本書は「朝日ぎらい」ということで朝日新聞への批判がテーマです。ただ、筆者があとがきで書いてあるとおり、それが朝日新書から出版されることが、1つの救いであるというのはそのとおりだなと感じます。

にもかかわらず、この本のリリース直後のアマゾンのカスタマーレビューは一種の炎上し、評点が1.5になっていました(現在は戻っています)。

レビューとして、どんなことが書かれているかといえば、いかに朝日新聞が偏向報道しているのか、反省すべきかというネトウヨ的な主張でした。ざっと見た限りでは、おそらく本書を読んでいないような人が書いているように思います。
つまり、朝日新書からでた朝日ぎらいのタイトルを見て、「朝日への批判への批判」と読み取って攻撃していたのだと推察できます。

奇しくも本書内で主張されていた、ネトウヨの行動そのものがカスタマーレビュー上で展開されており、興味深い状況になっていました。脊髄反射的に「日本人」というアイデンティティを脅かす「朝日」に対して攻撃するということはどういうことかという良い教材でした。

と同時にこういった人が一定数いて、さらにその背後にサイレントで支持しているひとも結構な数いると考えると怖くなる部分もありました。

まとめ

ということで、「朝日ぎらい」の感想でした。

私自身は、本書で言う「リベラル」的な価値観を持ったタイプの人間です。ただ、一方でマスコミ等に対しては一定批判的な感情を持っていました。
また、政治的な主張は特別ないものの、安倍政権への認識が世代やクラスタによって大分違うのもなんとなく感じておりそこに疑問も持っていました。

本書を読んで、なんとなく自分自身が感じていた違和感や疑問が氷解しました。今後自分の主張を考える際の1つの見取り図として何度も読むことになるだろうなとも感じています。

政治はぜんぜんわからないけど、なんとなくもやもやしたものを持っている人、自分なりに理解したい人には絶対的におすすめできる1冊だと思います。ぜひ手にとってみてください。

さすが橘玲という1冊でした。

以上、【書評】橘玲の「朝日ぎらい」は政治が詳しくないけど、現状の日本やマスコミにモヤモヤしたきもちに明確な形を与えてくれる名著であるでした。